外に出られないからこそ、室内で、建築内部で自然の光や風、季節、植物の緑を感じて欲しい。
介護施設、看護施設、老人ホームを設計する時に常々考えて設計しています。
身障者、高齢者には身体や個々の状況から、外出が出来ない方が一定数いらっしゃいます。そんな方にも、時間季節で変化する光、木々が揺れる風の様子、緑から茶になり葉が落ち枝だけになる樹木の移り変わりを感じて欲しい。
六角形の建築の真ん中に、六角形の吹き抜けの共用部を作りました。建物中央から自然、光、風、季節を取り込み、全体に配り行き渡る配置です。
吹き抜け越しに、樹木を眺め、周囲の季節を感じられます。
吹抜けとは
吹抜け(ふきぬけ)とは、建物内の一部の空間が、複数の階層を通して開放的に連続している構造のことを指します。つまり、1階から2階、またはそれ以上の階にわたって空間がつながっている状態です。
吹抜けの主な特徴と利点には以下の点があります:
光の取り入れ: 吹抜け部分には大きな窓や天窓を設けることが多く、自然光が豊富に取り込まれます。これにより、室内が明るくなり、開放感が生まれます。
空間の広がり: 吹抜けを設けることで、階層間に視覚的なつながりができ、空間が広がりを感じさせます。特にリビングやダイニングなどの共用スペースに吹抜けを設けることで、開放感が増します。
通風: 吹抜け部分に窓を設けることで、空気の流れが良くなり、自然な通風を促進します。これにより、室内の湿気や熱気がこもりにくくなります。
デザイン性: 吹抜けは空間に独特のデザイン要素を加えることができます。例えば、吊り下げの照明や装飾、バルコニーを設けることで、デザインにアクセントを加えることができます。
音の響き: 吹抜け部分は音が響きやすくなることがありますので、音響設計に注意が必要です。
吹抜けは、開放感と自然光の取り入れが魅力ですが、構造的な考慮やエネルギー効率なども含めて、計画的に設計することが大切です。
吹抜け越しに樹木を眺める
吹抜け越しに樹木を眺める設計は、自然とのつながりを感じる素敵な方法です。以下は、その設計を実現するためのポイントと考慮事項です。
1. 位置と視線の調整
吹抜けの位置: 吹抜けを設ける場所を樹木が見えるように配置します。リビングやダイニングなどの共用スペースから樹木が見えるようにすると、日常生活の中で自然を感じやすくなります。
視線の高さ: 吹抜けの開口部を適切な高さに設定し、樹木の位置に合わせて視線が合うようにします。樹木の上部や全体が見えるように調整します。
2. 窓の設計
大きな窓やガラス壁: 吹抜け部分に大きな窓やガラス壁を設けることで、樹木がよりよく見えるようにします。特に、天井から床までの大きなガラス面は、視界を広げ、自然光を取り入れやすくなります。
クリアガラス vs. 繊維ガラス: クリアガラスを使用することで、視界が遮られることなく、樹木の美しい景色を楽しむことができます。プライバシーが気になる場合は、曇りガラスや目隠しフィルムを使うことも考えられます。
3. 樹木の選定
樹木の種類: 吹抜け越しに見える樹木の種類を選ぶ際は、季節ごとに変化する葉の色や花を考慮すると、年間を通して楽しめます。常緑樹や季節ごとに色が変わる樹木を選ぶと良いでしょう。
成長を考慮: 樹木が成長するにつれて、視界が遮られないように成長パターンを考慮して選ぶと良いです。また、樹木の剪定も定期的に行う必要があります。
4. デザインとバランス
内部のデザイン: 吹抜け越しに樹木が見えることで、内部空間のデザインがより自然と調和するように、家具や装飾を配置します。自然素材や明るい色合いを使うと、樹木との相性が良くなります。
外部の景観: 吹抜けから見える外部の景観も考慮し、樹木以外の要素が美しく保たれるように配慮します。
5. メンテナンス
清掃: 吹抜けのガラスや窓は定期的に清掃が必要です。外部の景観を常に楽しむために、ガラスの清掃を怠らないようにしましょう。
樹木の管理: 樹木の手入れも重要です。定期的な剪定や害虫対策を行い、美しい状態を保つようにします。
吹抜け越しに樹木を眺めることで、自然とのつながりを感じながら、室内空間に心地よい癒しをもたらすことができます。設計段階でこれらのポイントを考慮し、理想の空間を作り上げてください。
樹木を眺めると景色は季節を感じる
樹木を眺めると季節を感じる理由は、主に以下の要素によるものです:
1. 葉の変化
色の変化: 季節ごとに樹木の葉の色が変わります。春や夏には緑色が濃くなり、秋には紅葉が見られ、冬には葉が落ちることが多いです。これらの色の変化は、季節の移り変わりを視覚的に伝えます。
形状の変化: 一部の樹木は季節によって葉の形状が変わることがあります。例えば、落葉樹は秋に葉を落とし、冬には裸木になります。
2. 花や実の変化
花: 樹木の種類によっては、春や夏に花を咲かせるものもあります。花の開花時期や色は季節によって異なり、これが季節感を強調します。
実: 樹木の果実も季節ごとに変わります。例えば、秋には果実が熟し、冬には実が残ることがあります。
3. 樹木の成長サイクル
成長: 春から夏にかけて樹木は成長し、葉や枝が豊かになります。一方、秋から冬にかけては成長が遅くなり、葉が落ちることで樹木の姿が変わります。この成長サイクルが季節感を演出します。
4. 周囲の環境
地面の変化: 落ち葉や枯葉が地面に積もると、季節の変化を感じやすくなります。特に秋には色とりどりの落ち葉が地面を彩ります。
空気の変化: 季節によって空気の質や湿度が変わり、これが樹木の見え方にも影響を与えます。例えば、冬は空気が澄んで見通しが良くなることがあります。
5. 光の変化
日照時間: 季節ごとに日照時間が変わることで、樹木の見え方が変わります。春や夏は日差しが強く、秋や冬は柔らかい光になります。これが樹木の色や印象に影響します。
樹木の変化は自然のリズムに深く関連しており、これを通じて季節の移り変わりを感じることができます。樹木が四季折々の変化を見せることで、自然のサイクルを実感しやすくなるのです。
介護施設を設計する上での注意点
介護施設を設計する際には、利用者の安全性、快適性、機能性を最優先に考える必要があります。以下に、介護施設設計の主な注意点を詳しく説明します。
1. 安全性の確保
バリアフリー設計: 障害物をなくし、車椅子や歩行器の使用を考慮した設計を行います。段差をなくし、スロープや広めの通路を設けることが重要です。
手すりの設置: 通路やトイレ、浴室などには手すりを設置し、高齢者や身体の不自由な方が安全に移動できるようにします。
滑りにくい床材: 床材は滑りにくいものを選び、転倒のリスクを減らします。特に浴室やトイレなどの湿気の多い場所では、適切な防滑対策が必要です。
2. 快適性の向上
適切な温度管理: 室内温度の調整が容易にできるように、エアコンや暖房設備を配置し、快適な室温を維持できるようにします。
音の管理: 静音性や音の反響を考慮し、居住空間が騒音で不快にならないようにします。防音材を使うなどして、快適な音環境を作ります。
自然光の取り入れ: 自然光を取り入れることで、明るく、心地よい空間を作ります。適切な窓の配置や天窓の設置を検討します。
3. 機能性の確保
動線の工夫: 利用者やスタッフの動線を考慮し、施設内の移動がスムーズに行えるように設計します。例えば、トイレや浴室などへのアクセスが便利であることが重要です。
収納スペース: 必要な物品を収納できるスペースを十分に確保します。特に医療器具や介護用品などの収納がしやすいように設計します。
多機能空間の設計: リビングや食堂など、多目的に使える空間を設けることで、利用者の活動の幅を広げます。
4. ユニバーサルデザイン
視覚・聴覚の配慮: 視覚や聴覚に障害がある方にも配慮し、分かりやすい表示やサインを設置します。視認性の高いカラーや大きな文字、音声案内などが考えられます。
シンプルなデザイン: 雑然とした印象を避け、シンプルで使いやすいデザインにすることで、利用者が安心して過ごせる空間を作ります。
5. スタッフの作業効率
スタッフの動線: スタッフが効率よく作業できるように、作業エリアや必要な設備を適切に配置します。例えば、医療処置が行いやすいように、必要な設備を集約することが考えられます。
作業スペース: スタッフが休憩できるスペースやミーティングルームも確保し、働きやすい環境を整えます。
6. 衛生管理
清掃のしやすさ: 清掃がしやすいように、汚れがつきにくい材料を使用し、清掃しやすいレイアウトを心掛けます。
感染対策: 感染症対策を考慮し、適切な換気や消毒がしやすい設計を行います。手洗い場や消毒ステーションの設置も重要です。
7. 心理的な配慮
居心地の良さ: 温かみのあるデザインや、利用者がリラックスできる環境を作ることで、心地よい生活空間を提供します。
プライバシーの確保: 個々のプライバシーを尊重し、適切な個室やパーティションを設けることが大切です。
8. エコロジーと持続可能性
エネルギー効率: エネルギー効率の高い設備や材料を使用し、長期的な運営コストを抑えます。再生可能エネルギーの利用も検討します。
環境への配慮: 環境に優しい材料や技術を取り入れることで、持続可能な設計を実現します。
これらの注意点を考慮し、利用者とスタッフのニーズに応じた設計を行うことで、快適で安全な介護施設を作り上げることができます。
利用者を快適に見守れる、介護施設
利用者を快適に見守れる介護施設の間取りを設計するには、利用者の生活の質を向上させると同時に、スタッフが効率よくサポートできるようにすることが重要です。以下に、具体的な設計のポイントを詳しく説明します。
1. 中央の共用エリア
広めの共用スペース: 施設の中心に広めの共用エリアを設けることで、利用者が集まって交流できる場を提供します。リビング、ダイニング、アクティビティルームなどが一体となった開放的なスペースが理想です。
視覚的な監視: 中央に配置することで、利用者を全体的に見渡しやすくなります。特に、共用エリアから各居室が見えるように配置することで、利用者の動きや状態を把握しやすくなります。
2. 居室の配置
居室の配置: 各居室は共用スペースから適度に距離を置きつつも、視線が届く位置に配置することで、スタッフが簡単に利用者の様子を確認できます。例えば、居室の入口が共用エリアに面していると、状況を把握しやすくなります。
視覚的なアクセス: 居室に大きな窓を設けて、共用エリアや外部の景色が見えるようにすることで、利用者が孤立感を感じにくくなります。
3. スタッフの作業エリア
オフィスとスタッフルーム: スタッフのオフィスや休憩室を設け、すぐに共用エリアにアクセスできる位置に配置します。これにより、スタッフが必要なときにすぐに対応できるようにします。
スタッフの動線: スタッフが効率よく移動できるように、共用エリアから各居室、トイレ、浴室などへの動線を考慮します。スタッフの動線が利用者の動線と交差しないように工夫します。
4. 安全性とプライバシー
手すりやバリアフリー: 各居室や共用エリアには手すりを設置し、バリアフリー設計を行います。移動の際に利用者が安全に歩けるようにします。
プライバシーの配慮: 居室には十分なプライバシーを確保し、必要に応じてパーティションやカーテンで仕切れるようにします。個室や共用エリアのデザインにも配慮し、利用者が安心できる空間を提供します。
5. 視覚と聴覚のサポート
視覚的なアクセシビリティ: 明るい照明やコントラストのある色使いで、視覚的に分かりやすい環境を作ります。視力に障害のある利用者でも利用しやすいように工夫します。
聴覚のサポート: 聴覚に障害のある利用者のために、視覚的なサインや音響システムを導入します。音の反響や騒音を抑えるためのデザインも考慮します。
6. アクティビティエリア
活動の場: アクティビティルームや趣味の部屋を設けることで、利用者がさまざまな活動を楽しむことができます。利用者の興味や好みに合わせた活動の場を用意することで、生活の質を向上させます。
屋外エリア: 屋外に庭やテラスを設け、自然を楽しむことができるエリアを作ります。外気を感じながらリラックスできる場所は、利用者のストレス軽減にもつながります。
7. 感染症対策
衛生管理: 各居室や共用スペースの清掃がしやすいように、デザインや材料選びを工夫します。また、手洗いや消毒がしやすい場所に消毒ステーションを設けることも重要です。
換気: 吹抜けや窓を利用して、施設内の換気が良好になるように設計します。新鮮な空気を取り入れることで、健康的な環境を維持します。
8. 感情的なサポート
リラックスできる空間: 落ち着いた色合いや自然素材を使用したデザインで、リラックスできる空間を提供します。心地よい空間は、利用者のストレスを軽減し、安心感を与えます。
コミュニケーションの促進: 共有スペースには利用者同士が自然に会話できるようなレイアウトを心掛け、コミュニケーションの機会を増やします。
これらの設計ポイントを取り入れることで、介護施設は利用者にとって快適で、スタッフにとっても効率的な作業環境を提供することができます。利用者のニーズや施設の方針に応じて、適切な設計を行うことが大切です。
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