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執筆者の写真t-ogino

風が吹いていない時でも、なぜか風通しがよい間取りの設計方法。重力換気という熱の差を利用した換気方法。

更新日:8月25日


光と風をとり込む断面図

湿度が高く、蒸す季節ですね。

我が家は、南から北へ風が抜ける窓の配置になっているため、エアコンをつけるより、涼しく快適な時間も味わえます。

しかも、風が全く吹いていない、どよんとした天候でも、家の中に風の空気の流れが生まれるのです。

そもそも、なぜ風通しがあると気持ちよいのか

子供のころ、夏休みのプールサイドに寝転ぶと、プールの水面すれすれを撫でる風の流れを感じて、心地よい気持ちになったことがありました。

妙なところで、風通しの心地よさを感じたものですが、人は自然の環境にダイレクトに触れることで、感覚が鋭敏になる部分があるのでしょう。

暑い夏、風を皮膚で感じると、体の熱を冷ましてくれ、涼しさを感じます。

扇風機でも感じますが、自然の風のほうがより心地よい。

外の綺麗な空気を室内に通すと、自分の体だけでなく、室内自体も熱が冷まされ、家全体が適切な温熱環境になります。

淀んだ、室内の空気が外に出で、新鮮な外部の空気が入ることで、新鮮な入れ替わることにもなります。

春や秋の風が心地よいのは、熱を冷ましてくれるからではなく、新鮮な空気を、皮膚感覚で味わうからでしょう。

風をとり込む平面図

温度の差をつくることで、無風でも空気が流れる

エアコンなど機械の空調機で、室内温度をコントロールする場合、すべての場所が同じ温度にするのが、快適さにつながると言われています。

ただ、ここでの快適とは、不快でないというだけ話で、普通よりもっと快適にするという積極性はありません。

自然の風で、室内を心地よくするには、わざと温度の差をつくります。

我が家では、南側と北側にそれぞれ庭があります。

南側は、直射日光のあたる庭になるため、温度が高くなります。

北側は日陰ですので、温度が低い。

空気は、温度の低い方から、高い方へ移動します。

風の無い日でも、気温の低い庭から、気温の高い庭へ、間にある室内を通して空気が移動するため、風が無い日でも空気が動き、風通しが生まれました。

外からみると家は、風を遮る遮蔽物ですので、そこを通る窓を2方向開けると風を通す穴になりますから、温度差利用もふくめ、ビル風のように空気が動きます。

ハイサイドライトのあるリビング

低い窓、高い窓

窓の高さを変えるだけでも、無風の室内に風通しが生まれました。

重力換気という手法ですが、窓を低い位置と高い位置2か所につくり、開きます。

温度の高い空気は、上の方に上がっていきます。

高い位置に窓があると、その空気を外に逃がす。

そして逃げた空気の分、低い位置の窓から、空気が入ってきます。

入ってきた空気は温度が低いのですが、室内で温められ、また上部に上がっていき、上の方の窓から、外に出て行く。

部屋の中に、小さな上昇気流がつくりだすのです。

高低差があるほど、気流がよく動くため、階段をつかって空気を逃がしたり、吹抜け上部や、ハイサイドライトの窓から空気を逃がすことで、より、風通しいのよい、室内環境になります。

冷暖房がいらない時期がふえる

自然の空気を換気すると、冷暖房がいらない時期がふえます。

冷暖房がいらない環境は、家の構造材・仕上げ材などにとっても、負担のかからない状態になります。

家は体の延長線にあるといいます。

部屋が湿気なく材料に負担がかからない状態は、人も心地よくなります。



重力換気とは


重力換気は、自然の重力を利用して建物内の空気を換気する方法です。これには以下の基本的な仕組みがあります:


  1. 基本原理: 空気は温度によって異なる密度を持っています。温かい空気は軽く、上昇します。一方、冷たい空気は重く、下降します。重力換気はこの温度差に基づいて空気の流れを利用します。


  2. 換気のプロセス: 建物の下部に入口(換気口)を設け、上部に排気口を設置します。暖かい空気が下から入り、上に向かって上昇することで、建物内の空気が自然に循環します。この循環により、内部の新鮮な空気が供給され、古くなった空気が排出されます。


  3. 利点:

    • 省エネルギー: ファンや機械を使わずに自然の力だけで換気ができるため、エネルギーコストが削減されます。

    • シンプルな設計: 機械的な換気システムが不要で、設計がシンプルになります。

    • 持続可能性: 環境に優しく、長期的に持続可能な換気方法です。


  4. 考慮点:

    • 気候条件: 外の気温や風の影響を受けるため、設計に注意が必要です。例えば、冬場に寒すぎる外気が入り込むと、暖房効率が下がる可能性があります。

    • 建物の配置: 換気の効果を最大限に引き出すために、建物の形状や配置を考慮する必要があります。


重力換気は特に古い建物やエネルギー効率を重視する設計において有用ですが、現代の建物では機械的換気システムと併用することもあります。


風通しの良い間取りの設計方法


風通しの良い間取りを設計するためには、以下のポイントに注意して設計することが重要です:


1. 配置と向き

  • 風の流れを意識する: 地域の風の向きを調べ、主要な風が通りやすいように窓やドアを配置します。一般的には、建物の長辺を風向きに合わせると、風通しが良くなります。

  • 建物の向き: 建物の設置向きを風向きに合わせることで、自然な換気が促進されます。南北方向に建物を配置し、主に東西に開口部を設けることが効果的です。


2. 開口部の配置

  • 対角線上に配置: 開口部(窓やドア)を対角線上に配置することで、風が建物内を横切るようにします。これにより、部屋全体に風が流れやすくなります。

  • 高低差を利用する: 上下に開口部を配置することで、暖かい空気が上に上昇し、冷たい空気が下に流れ込む自然な換気が行われます。例えば、2階建ての家の場合、1階に換気口、2階に排気口を設ける方法があります。


3. 部屋の配置とレイアウト

  • オープンプラン: 部屋をオープンにすることで、風がスムーズに流れる空間を作ります。壁や仕切りを最小限にし、風の通り道を確保します。

  • 通風のための間取り: キッチンやリビングルームなど、頻繁に利用する空間を通風の中心に配置し、他の部屋と連携させることで、効率的な換気が実現できます。


4. 窓とドアのデザイン

  • 窓の大きさと配置: 大きな窓やスライディングドアを使うと、風の通りが良くなります。また、窓の高さや位置を工夫して、風が部屋の奥まで届くようにします。

  • 可動式の窓: 風向きや天候に応じて開閉できる窓を使用すると、風通しを調整しやすくなります。


5. 外部要因の考慮

  • 周囲の障害物: 建物の周りに高い建物や樹木がある場合、それらが風を遮る可能性があります。風通しを確保するために、周囲の環境も考慮して設計します。

  • 風の通り道: 外部に風の通り道となる通路や庭を設けることで、建物内に風を取り込みやすくします。


6. その他の工夫

  • 通風口: 通風口やエアスルーを設けて、風の流れを助けることも考慮します。

  • 自然素材: 木材や竹などの自然素材を使うことで、自然の風を感じることができます。


これらのポイントを考慮して、風通しの良い間取りを設計することで、快適で健康的な住環境を実現することができます。

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