|豊田市美術館|
美しい美術館の展示室、陶器を飾っている質感のあるギャラリー、そんな素敵な場を住まいに作りたいと思いませんか??
ギャラリーや美術館のような空間を設計する方法が、2つあります。
ひとつは、空間のボリューム。
もうひとつは、素材がキーワードです。
豊田市美術館の奈良美智展をみて考えました。
豊田市美術館のギャラリーの美しさ
豊田市美術館は、ロビーの吹抜けのデザインが印象的な美術館です。 白い空間の吹抜けに、黒のボーダー状のアート作品。 中央の電光掲示板もアート作品です。
美術館は、白く大きな吹抜け空間が特徴的です。 特に、豊田市美術館は美しさが際立っています。
空間のボリュームと素材を美術館と同じにする
美術館やギャラリーのような空間を生み出すには、その空間のボリュームと素材を、同じボリューム感にし、素材も近しい素材を選ぶことで空間が同じ質を持つことができます。
豊田市美術館のロビーの素材は、壁の白くマットな塗装と、床の大理石でできている、白の空間です。 同質の空間を生み出すには、同様な素材を使います。 壁・床・天井を白系に統一することで、美術館らしい、美しいビジュアルが目に飛び込んで来ます。 注意すべきは壁の白はマットにすること。 ピカピカした艶のある塗装は、光が反射してアート作品が見えづらくなるため、美術館では艶の無い塗装を施します。 同様に、住宅でも美術館的な空間にする場合は、マットな塗装にします。
ボリュームとは、空間の大きさです。 豊田市美術館の吹抜けは、余りに大きく、住まいやクリニックなどに持ってくることは出来ません。 ボリューム感をそろえるには、平面の幅と空間の高さの比率を同じくすることで、美術館的な空間の大きさが生まれます。 更に、美術館では窓をあまりつくりません。 美術品の劣化をさける為ですが、ロビーなども大きな窓は、1Fの1方向だけにして、高いところに小さな窓をつくるだけです。 この幅と高さの比率をあわせた空間の大きさと、窓の位置を同様にすることで、美術館のような場所を生み出します。
美術館のような、クリニックのロビー
内科のクリニックのデザイン事例です。 平面の幅に比べて天井をかなり高くしています。
床:天井高さ=1:2。
吹抜けの空間にしても、かなり細長くノッポな空間です。
窓も大きな窓は一つの壁のみ。 他には天井の高いところに小さな、ハイサイドライトだけ。
壁全体は白の壁と天井。 壁の片側だけ緑にし、その壁の扉には数字を書き、この壁はアート作品の絵を設置しているのと同じ状態にしています。
床のフローリングは、最近の美術館では床を木製にする展示室も多く、同じ組み合わせにしました。 クリニックの待合ですが、美術館のような、清潔さとのびやかさのあるスペースになりました。
陶芸や椅子、織物など自然素材を元に制作されたアート作品のギャラリーは、木や土などこれも自然素材でつくります。 自然の質感には、無機質な空間よりも、素材感を感じられる空間の方が、親和性があるからです。
リノベーションした、単身者向けのアパートの部屋です。 古い木の梁と、合板の壁、杉材の床は自然素材らしい質感を形成しました。 吹抜け天井の高さと古い木の梁もあいまって、この空間に現代作家の陶芸作品を飾ると似合います。 自然素材という同質の素材同志の空間とモノは、お互いをより引き立てるからです。 賃貸アパートですが、ナチュラル思考の若い方に人気のアパートになりました。
ナチュラルテイストのギャラリー的な空間も、素敵なギャラリーと同じ素材・同じ空間の大きさにすることで、住まいの中に取り込み、その美しさを日々味わいながら生活する事ができます。
奈良美智 for better or worse
作品点数が多く、これだけ集まるのは、今後ないかもしれないほど、充実した展覧会です。 ほわっとした絵だなと見ていると、怖さを感じ始めたり、以前みた作品も違う表情に見えたり。奈良さんは基本的に、画家さんなんだなと、改めて感じました。 grafと共同の小屋のインスタレーション作品が、可愛らしくて、スケール感が好きでしたが。愛知で学生時代を過ごした画家にとっての思い入れも、受け取れた気がして、創作することの素敵さを感じました。
ギャラリーの様な住まいの設計方法
ギャラリーのような住まいの設計は、空間の使い方やデザインの哲学を工夫することで、アートや美的な要素を引き立てる住まいを作ることができます。以下はそのためのポイントです:
空間の開放感: ギャラリーのような住まいは、開放感と広がりを大切にします。仕切りを最小限に抑え、広々としたリビングや展示スペースを作ることで、アート作品や家具が映える空間を作ります。
照明: 良い照明はギャラリーにとって不可欠です。自然光を取り入れる大きな窓や天窓を設けたり、調整可能なスポットライトや間接照明を使って、作品やデザイン要素を引き立てます。
色と素材: 壁や床、天井の色はニュートラルなトーンにすることで、アートや家具が目立つようにします。また、高品質の素材を使用し、シンプルでありながらエレガントなデザインを目指します。
展示スペース: アートやコレクションを展示するための壁面や棚を設けることで、スペースをギャラリーとして活用します。可動式のパネルやフレキシブルな展示棚も便利です。
家具の配置: 家具は少なめにし、必要最低限にすることで、空間にゆとりを持たせます。また、デザイン性の高い家具やアートピースが主役になるように配置を工夫します。
パーソナルな要素: ギャラリーのような住まいでも、住む人の個性やライフスタイルを反映させることが大切です。好きなアート作品やコレクションを飾ることで、自分らしい空間にします。
フローと動線: 空間の流れや動線にも注意を払い、訪れる人が自然に作品やデザインを楽しめるようにします。
ギャラリーのような住まいは、アートやデザインの美しさを最大限に引き出すために、全体のバランスやディテールに気を配ることが重要です。
自然素材を使ったギャラリー的な住まいの吹抜けの設計方法
自然素材を使ったギャラリー的な住まいの吹抜け設計には、素材の特性を活かしつつ、開放感と美しさを兼ね備えた空間作りが求められます。以下はそのための具体的な設計方法です:
1. 素材選び
木材: 天井や壁に天然木を使用することで、暖かみのある自然な雰囲気を演出します。オーク、ウォールナット、杉など、耐久性と美しい仕上げが特徴の木材を選びましょう。
石材: 石やタイルを使用して、自然の質感と重厚感を加えます。例えば、リビングの一部に石の壁面を取り入れることで、視覚的なアクセントが生まれます。
コルクや麻: 壁の一部にコルクや麻の素材を使うと、さらに自然な雰囲気を演出し、音の吸収効果も期待できます。
2. 吹抜けのデザイン
高さとスケール: 吹抜けの高さは、空間に開放感をもたらし、視覚的なインパクトを与えます。2階以上の空間が見渡せるように設計することで、ギャラリーのような広がりを感じさせます。
フレームと構造: 木製の梁や柱を露出させることで、自然素材の質感を強調し、工業的な構造から解放された印象を与えます。
3. 光の取り入れ方
自然光: 大きな窓や天窓を設けることで、自然光を最大限に取り入れます。木材や石材の反射を利用して、室内全体が明るくなるようにしましょう。
間接照明: 吹抜け部分には間接照明を設置し、柔らかい光で空間全体を照らすことで、アート作品や素材の質感を引き立てます。
4. 風通しとエコ機能
換気: 吹抜けを利用して自然な風の流れを作り、空気の循環を促進します。これにより、室内が快適な温度に保たれます。
断熱: 自然素材で断熱効果を高め、エネルギー効率の良い空間を作ります。木材や石材は、適切に使用することで断熱効果があります。
5. 装飾とアクセント
アートの展示: 吹抜けの壁面や天井部分にアート作品を展示することで、ギャラリーのような雰囲気を強調します。作品が際立つように、適切な照明を使用するのも重要です。
緑の取り入れ: 吹抜け部分に植物を配置することで、自然とのつながりを深め、視覚的にも楽しませてくれます。吊るしのプランターや垂直ガーデンなどが効果的です。
6. 家具の配置
シンプルでありながら存在感のある家具: 吹抜けの空間には、シンプルでデザイン性の高い家具を配置することで、空間の広がりを損なわず、アートや素材が引き立ちます。
これらの要素を組み合わせることで、自然素材を活かした美しいギャラリー的な吹抜け空間を実現できます。
住まいの設計・計画の解説
→収納計画