認知症の方が回復する施設の設計とは?デザインとは?
介護施設を設計する時にいつも考えていることであり、設計力で認知症が回復するこ
とを目指して設計をしています。
サービス付き高齢者施設ではありますが、認知症の方を積極的に受け入れる施設で、
1部認知症の方専用の領域になっています。
その認知症の方専用の共用スペース(食堂兼機能回復訓練室)です。
認知症の方だからこそ、より直接心に訴えかけ、感じる空間を考えました。
ハイサイドライトから取り込んだ、光と風は、食堂を通り、中庭へ抜けていく。光と
風の通り道の真ん中に認知症専用共用スペースがあります。風の変化・光の変化を敏
感に感じられる場所になっています。
ベンガラの様な赤の色彩は、食欲を増し高齢者の好む色彩です。色彩には、日本の伝
統色を使い、馴染んだ心に溶け込む色彩計画をしました。
気持ちを前向きにしてくれる採光とベンガラの色彩の空間です。
認知症が回復するデザイン
認知症が回復するデザインには、主に以下のような要素が考慮されています:
安全性:
滑り止め: 床や階段には滑り止めの素材を使用。
手すり: 階段やトイレなどには手すりを取り付け、移動をサポート。
明るい照明: 十分な照明で暗い場所をなくし、つまずきやすい障害物を減らします。
視覚的な明確さ:
色分け: ドアや階段の縁、スイッチなどを色分けして、視覚的に識別しやすくします。
シンプルなレイアウト: 環境が複雑すぎないようにし、迷子になりにくくします。
認知機能のサポート:
ラベリング: 部屋や物のラベルを使い、どこに何があるかを明確にします。
リマインダー: 時計やカレンダーを目立つ場所に置き、日付や時間の感覚を維持します。
快適性:
音楽や香り: 好ましい音楽や香りを取り入れて、リラックスできる環境を提供します。
温度調整: 適切な温度管理で快適な空間を保ちます。
社会的な要素:
コミュニケーションエリア: 家族や友人と簡単に交流できるスペースを作ります。
アクティビティゾーン: 趣味や日常の活動ができる場所を用意し、精神的な刺激を与えます。
これらの要素を考慮することで、認知症の症状を軽減し、生活の質を向上させることができます。
認知症とは何
認知症は、記憶力や思考能力、判断力などの認知機能が低下する病気の総称です。一般的に高齢者に多く見られますが、若年層にも発症することがあります。認知症にはいくつかの種類があり、それぞれに異なる原因や症状があります。以下に主な種類とその特徴を説明します:
アルツハイマー病:
特徴: 最も一般的な認知症で、記憶力の低下から始まり、徐々に思考力や判断力が影響を受ける。脳内に異常なタンパク質が蓄積することが関与しています。
症状: 短期記憶の喪失、時間や場所の混乱、言葉を思い出せないなど。
血管性認知症:
特徴: 脳の血管に問題が起きることで、脳の一部が損傷し、認知機能が低下します。脳卒中やその他の血管障害が原因です。
症状: 突然の記憶喪失や認知機能の低下、運動機能の問題などが見られることがあります。
レビー小体型認知症:
特徴: 脳内にレビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することが原因です。パーキンソン病に似た運動症状も伴うことがあります。
症状: 幻覚、動作の遅さ、注意力の低下、急激な精神状態の変化など。
前頭側頭型認知症:
特徴: 前頭葉や側頭葉の損傷が原因で、性格や行動に変化が現れます。
症状: 社会的な行動の変化、感情の不安定さ、言語能力の低下など。
共通の症状には以下が含まれます:
記憶力の低下
日常生活の困難
判断力や理解力の低下
自己管理の難しさ
感情の変化や行動の変化
認知症の原因や進行は個々に異なるため、診断と治療には専門医の評価が必要です。治療方法には、薬物療法や非薬物療法(リハビリテーションや環境調整など)があり、症状の緩和や生活の質の向上を目指します。
認知症が回復する為の自然光の扱い
認知症の症状管理や回復には、自然光が重要な役割を果たすことがあります。自然光の適切な取り入れ方が、認知症患者の生活の質を向上させることが示されています。以下に、自然光の扱い方について詳しく説明します。
1. 自然光の取り入れ方
日中の自然光を取り入れる: 朝から昼にかけての自然光は、体内時計(サーカディアンリズム)の調整に役立ちます。日光に当たることで、睡眠と覚醒のリズムが整えられ、昼夜逆転の改善に繋がります。
大きな窓やサンルームの設置: できるだけ多くの自然光を取り入れるためには、大きな窓やサンルームの設置が効果的です。これにより、日中に部屋全体が明るくなり、精神的な健康が促進されます。
2. 自然光のタイミング
朝の光を浴びる: 朝の自然光は、体内時計をリセットし、昼間の活動を促進します。朝の散歩や、朝食の際に窓から自然光を取り入れることが推奨されます。
一定の光のパターンを維持: 同じ時間に自然光を浴びることで、体内時計が安定しやすくなります。毎日一定の時間に自然光を取り入れる習慣を作ると良いでしょう。
3. 屋外活動の促進
外での活動: 天気の良い日は、外での活動を促進します。庭や公園での散歩など、日光を浴びながら身体を動かすことで、認知機能や気分の改善が期待できます。
4. 室内環境の工夫
室内の光環境: 照明を工夫して、自然光に近い光を選ぶことで、暗くなりがちな部屋でも快適に過ごせます。特に昼間は明るい色温度の照明を使用し、夜間は暖色系の照明でリラックスできる環境を作ると良いでしょう。
光の反射: 窓や鏡を使って光を部屋の奥まで反射させると、室内全体が明るくなります。
5. 注意点
光過敏に配慮: 一部の認知症患者は、光に対して過敏な場合があります。そのため、強すぎる直射日光は避け、カーテンやブラインドを使って調整することが重要です。
季節の変化: 季節によって自然光の量が変わるため、季節ごとの光の取り入れ方に配慮することも必要です。
自然光を適切に利用することで、認知症患者の生活の質が向上し、日々の活動がより快適になるでしょう。
認知症が回復する色彩
認知症の症状管理には、色彩の使い方も重要な要素です。色彩は心理的な影響を及ぼし、認知症患者の気分や行動に変化をもたらすことがあります。以下に、認知症の回復に役立つ色彩の使い方について詳しく説明します。
1. 落ち着きを促す色
青色: 青色はリラックス効果があり、ストレスや不安を軽減するのに役立ちます。穏やかな青色は心を落ち着け、集中力を高めることができます。
緑色: 自然を連想させる緑色は、心身のリラクゼーションに寄与します。特に薄い緑色やパステルグリーンは、落ち着きや安らぎを提供します。
2. 活動を促す色
オレンジ色: オレンジ色はエネルギーや活力を引き出す色として知られています。社交的な活動やコミュニケーションを促進するのに役立ちます。
黄色: 明るく暖かい黄色は、気分を高め、陽気さを引き出します。注意を引きやすく、活力を与える効果があります。
3. 安心感を与える色
クリーム色やベージュ: ソフトで温かみのある色合いのクリーム色やベージュは、落ち着いた環境を作り出し、安心感を与えます。
薄いピンク: 穏やかで優しい印象を与える薄いピンク色は、安心感を提供し、情緒的な安定を助けます。
4. 視認性の高い色
コントラスト: 認知症患者は視覚的なコントラストを理解しやすい傾向があります。例えば、白い背景に黒い文字やシンボルは視認性が高く、理解しやすいです。
鮮やかな色: 鮮やかな色(例: 赤や青)は視認性が高く、注意を引くのに役立ちます。特に、道具や設備においては、認識しやすい色使いが有効です。
5. 個別対応
個々の好み: 認知症の患者には個々の色の好みがある場合があります。そのため、個人の好みや反応に基づいた色彩の使用が効果的です。
文化的背景: 色に対する意味や感情的な反応は文化によって異なる場合があるため、患者の文化的背景を考慮することも重要です。
6. 色彩の実用的な使い方
居住空間: 居住空間においては、リラックスできる色を主に使用し、活動的なエリアや覚醒を促すエリアにはエネルギーを引き出す色を使うと良いでしょう。
日常用品: 食事のテーブルや日常用品の色も重要です。食事の色が美味しそうに見えるように工夫することが、食欲を促進することがあります。
色彩を適切に利用することで、認知症患者の生活の質や気分が改善され、より快適に過ごせるようになります。
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